フェイクを仕掛けたプロデューサーと、気持ちよく騙された視聴者の話

・ガルシアP

【ニコニコ動画】事務に向かない事務員と、駆け出しアイドルの話。

日付勘違いしてて先ほどの更新に入れ忘れたので、ちょっと単独で取り上げてみることにします。

(以下ネタバレ)

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団長として劇団を率いる立場となった真にそこの所属俳優となっていたやよいの弟の浩司、更に過去に尾崎さんとユニットを組んでいた近藤聡美の娘、久美など、今回もまた多くの登場人物が新たに加わったわけですが…。
やはり驚きは何と言っても765プロに事務員として所属していた涼、そして駆け出しアイドルとして同じく765プロに所属していた秘蔵っ子、桜井未来の存在でしょう。



今回のこのタイトル、シリーズ第1話と第2話のタイトルを合体させたものなんですよね。
それだけに見始める前から視聴者の頭の中には既視感が働いて、事務員=美希/駆け出しアイドル=光 という図式が成立していたと思うんです。
だから、千早と律子の会話から場面が変わりレッスン場のシーンが始まると、ロゴのイメージカラーのせいもあり「美希が光のダンスレッスンを指導してるのか」と疑いもなく読み始めたはずです。そのまま2人の会話や独白を脳内で2人の声として置き換えて見ていた。



それが一転、実は今までのシーンは未来と涼のものだったということが明かされるとコメントは驚きの嵐w
いや、私も実際これには騙されました。何せそれまでの台詞が全て美希であることに違和感を抱かない、いわば「美希でも涼でもおかしくない台詞」に意図的に仕立て上げられていたからです。



「今伝えているのはダンスと、ビジュアルとのバランスね。」←男性/女性どちらでもとれる口調

「どうして自分がここにいるのだろう、と、事務員は考えた。」←どちらも事務員

「少なくとも上司は、事務員としての自分に高い評価は付けないだろう。」←黒井社長/律子

「アイドルを辞めたことに後悔はない。 あの時は、あれが最善の選択だった。」←美希がアイドルを辞めた経緯は過去回にて見せている

「律子……さん?」←美希は言わずもがな、涼は直属の上司であるので敬語を使わなければならない



いや、こうして改めて見返してみると見事なものです。
この一連の会話シーンの途中で少しでも相違点を表に出してしまえば「あれ、この人物美希じゃないんじゃない?」と思われてしまい、身構える時間を与え驚きはもう少し少なくなっていたでしょう。
それが、今日ここまでのコメントを見る限り途中で気が付いた人は皆無。疑うようなコメすら見えず、みんな「気持ち良く騙されて」くれています。……いや、私もそうなんですがねw
2人のイメージカラーが似ていることを差し引いても、ここまで見事なフェイクの成功例はちょっと見たことがありません。思わず2度見したくなる出来です。



ノベマスは読む動画形式とはいえ、今や演出面の洗練も著しく、見た目でまず勝負ということも少なくはありません。実際、そうした作品で数多くの驚き(ここまでやるのか!というような)を味わってきていますし、このシリーズも他にはないシルエット立ち絵や背景画像の豊富さ、良質なBGM群などで差別化もされています。
しかし、私がこのシリーズに惹かれるのはやはり練り上げられたテキストの見事さにあるのだな、と改めて確信致しました。
勿論、新しい世代の羽ばたきや各キャラクターのその後の姿という魅力もあるのですが、そうした人物たちがどのように立ち振る舞い、何を思って今そこにいるのか、ということがこうも鮮やかに書き記されているのは、ガルシアPの文章/設定構成力の見事さゆえであることに異論はないでしょう。
今回はそれを見事に裏付ける仕掛け、そして結果の証明であったと思います。脱帽でした。



とまぁ、そんなことを思ったりした回なのですが。少しずつ明らかとなっていく過去の話、そしてこれからの話。どちらも大変気になりますのう。新章に相応しい立ち上がりで次回が楽しみですわい。