七夕Pの限界が見えない

新作でまたまたガツンとやられました。





劇場公開された「空の境界」第1章におけるストーリーの見せ場を抜き出して構成された再現系MADです。正直なところ、私は映画を見に行けなかったので(小説も1章読んだところできっちり止まってるという体たらく)覚えてる範囲でしか再現が分からないのですが、それを抜きにしても演出が凄い。



イントロから真のダンスパートまでは「安心の七夕Pクオリティだなぁ」と気を抜いていたのですが、飛んでいる蝶だけを映すシーンで「お?」と目新しさに心惹かれ(映画からの再現等だったらすいません)、そしたら次の雪歩のパートですよ。


このカットだけ見ても何が凄いのか見てない人には全く分からなくて申し訳ないのですが、SSではこのシーンの驚きを伝えることが絶対に出来ないのですよ。
まるで壊れた人形かロボットのように、普通の人間には演技以外のことでは、いや演技でもまず行うことはない動作。画面から滲み出てくる常識とかけ離れた世界での出来事を見る側に強烈に訴えかけてくる。


(画像は色調いじって見えやすくしました)
前半ダンスパートでは普通の色だった真の目の色を変えて「直死の魔眼」を表現。
閉じていた目を開けた時に、というのはよくある表現ではありますが、屋上へ向かうエレベーターの中で行われるこの行為が実に儀式じみていて重みがある。本家映画でもこういうシーンになってますかね?
また、この「エレベーターの中」というのを理解させるために画面とキャラに施された揺れが実に自然で巧み。ストーリーを知らない人もこの後の屋上でのシーンを見れば「あ、あの揺れはエレベーターで上に昇っていることの表現か」と分かりますからね。



屋上で踊る真に重なる雪歩の姿。これは設定を知っている人への回答のようなもの、ですね。
ここの重なる一瞬の演出もタイミングといいスポットライトの当て方といい、やりすぎないラインを心得ていて絶妙。


真が見上げる空には満月をバックに宙に浮かぶ雪歩がこの世ならざる者の目でこちら見下ろす。
こちらは事件の鍵たる「浮遊する少女」の再現になっているわけですね。




原作が持つこの世を1つ踏み越えた先にある危うい世界の空気が3分半の動画の中に見事に表現されている。また、今更言うまでもないことですが、演出に一役買う背景の構築・選択、ライティング、カメラワークも一層磨きがかかっている。





例の「七夕革命の悲劇」のイメージが先行しすぎて一般視聴者からは正統な評価を受けきれていない気がする七夕P。そろそろドッカンと大ブレイクしてもいいんじゃないでしょうか。再生数は目安でしかないとはいえ、「いくらなんでも少ないんじゃないか」という作品が多いと思うんだよなぁ…


大ブレイクした場合どこまで伸びるのか、そしてますます磨きのかかる表現技法や演出の幅が一体どこまで伸び続けるのか。
まだまだ底の見えない方です、七夕Pは。