「ニコマス」であるからこそ、生まれ出た名作

・tloP

熱いよ。
これは本当に熱くて残酷な物語だ。



「一緒にドームに行こうね!」


「行けるのは1人だけよ」


一時はペアを組んで活動したこともある2人。
夜の公園でレッスンに付き合ったこともあった。
しかし、今その場所は決別の地点となった。


全ては、生き残るために。


画像貼り付きの感想は格納先で。


マクロスFの名曲「ライオン」を軸にした伊織とやよいの戦い。
決戦の地はアイドルアルティメットセミファイナル。
勝ち上がり、ドームの舞台を踏めるはたった1人。



親友である2人の戦いはアイドルマスターのオーディションと同じ形式で進んでいきます。しかしここに独自のアレンジが。




通常のゲーム中オーディションでは6人全てが第3回審査まで進めるのに対し、このオーディションでは下位2名の足切りが発生。下手にアピールを読み違えれば即失格という厳しさがプラスされています。


そして、このオーディションの模様は全国に生中継で放映されている、という設定。


(細かいところでテレビ局内ブース映像が入り込む)



伊織とやよい以外のアイドルも勿論負けるわけにはいかない。
皆それぞれの得意分野をアピールしたり、通称:思い出ボムを繰り出す辺りはまさにアイドルマスターのオンライン対人オーディションそのものだ。



伊織とやよい以外の出場者はシルエットで描写されているがこれは秀逸。出場者中最もイメージレベルが高く流行1位のビジュアルが強いこの子などは、テニスウェア伊織の髪型に亜美のパイナップルを付け加えていて特別性も高い。テンションも最高値だ。





それに対して、2人のステータスは特別高いわけではない。
全国にその模様が生中継されているアイドルアルティメットという大舞台としては少し似つかわしくないかも知れない。やよいに至っては冒頭の伊織との決戦前最後の会話でテンションは下がったままだ。
この辺りの事情についてはtloPが書き続けていたSS連載や、

過去作であるこちら(新作はこの動画の続きといっていいでしょう)を見ると理解が深まると思われる。設定を練りこんで作られているのだ。


設定。
そう、設定は「生中継」の最中である。
当然のことながら街頭の大型モニターやテレビ、ライブストリーミング配信でこの戦いを眺める人たちの中には、


ツイッターを使って実況を楽しむ人たち(ニコマスP)がいたり、


高槻家のみんながいたり(テレビは未だにアナログであったりする)、


同じ765プロアイドルや(ここの動きは実際には聞こえてるかは分からないのだが審査員の台詞に反応している。芸が細かい芝居だ)、




まだその才能を現していない876プロのアイドル達もこの熱い戦いを見ているのだ。特に、アイドル達の胸中はいかなるものか伺い知れない。高槻家はやよいの応援であることは間違いないし、ネットの実況民は野次馬成分が多分に含まれているものであろうことは容易に想像がつく。
が、765プロの4人は親友同士の戦いになったことに複雑な心境であろうし、876プロの3人は視線の熱さ(目線は見えなかったりするがそうとしか言えない)が違う。
この戦いを見て胸に去来するものがあったからこそのアイドルデビューが…と想像を巡らせるのも面白い。



そして審査員が帰ってしまう、所謂「ジェノサイド」で劣勢をひっくり返したやよいと、着実に星を積み重ねてきた伊織の一騎討ち。
(ここまでの各ジャンルのアピールについてでもいくらか書けそうだが時間がないので止めておく。オーディション戦術についても誰か書くんじゃないかな。)


2人の邪魔をするものは、もういない。



視線による無言のやりとりか。
それとも時同じくして2人の思い出が同時に甦ったか。
複雑に交差していた2人の思い出が、今、1つの方向を向いた。



そして突如現れるニコニコ動画でお馴染みの「読み込み中」のカット。
そう、私たちが見ているニコニコ動画。そのニコ生でもこの模様は配信されていた!そして投票機能があるのならば!「あなたが決める」と銘打たれたからには!この機能を使わない手はなかった!



見よ!このアイドルすらも覆い隠す勢いで流れ続ける投票コメントの勢いを!ここまで見て来た視聴者がこの熱い戦いに決着を委ねられたのだ!感じ入らないわけがないだろうが!!


このアイディア、実は世界の新着生放送の投票が最後の鍵となって生み出された演出だそうですが、正直なところ「この手があったか!」と脱帽せざるを得ません。
まさに「ニコニコ動画」、「ニコマス」でしか出来ないことをやってのけてくれました。熱い。視聴者も巻き込んだ、本当に熱い戦いだ。


勿論、どちらか決められない、というような方は投票しないのも1つの手段です。強制ではないのですから。
が、私はこの胸の熱い昂ぶりの前では棄権するという選択肢は当然のことながら浮かんでこなかった。しっかりと票を入れてきました。


この投票、表面上はニコ生での投票ということになりますが、先ほども述べた設定に従うならばこの時日本各地で投票ボタンを押す人で溢れかえっていたことでしょう。


ある人はニコ生やウェブでの投票を。
ある人は地デジの投票機能を使い。
携帯サイトからの投票も勿論ありそうだし。
ひょっとしたら電話投票も受け付けていたかも知れない。


そうした裏の場面を想像するのも、何か凄くワクワクするものを感じませんか。私たちニコマス民が大好きなアイドルが、お茶の間の話題を席巻している。それはとても素敵な場面じゃないかと思うのです。



そしてラストシーン。
アピール連打にダンスシンクロ、違う動きをしているのに2人が通じ合い、高め合っていると感じ取ったあと、動きはシンクロし始め。
そして2人は栄光と新たなステージを掴むため手を伸ばす。



それは伊織のルーレットではなく、
やよいのルーレットでもない。


2人の意識がシンクロして作り上げた2人だけの思い出。
そしてまだ見ぬ未来。


そう、この【good】には2人の姿はない。
今までの思い出ではない、明日の、未来の思い出なのだ。
それを2人で掴んだということ。
それは、決着の時を迎えても2人の絆は揺るがないということの証ではないでしょうか。



最後に少し付け加えるならば。
興奮した。
熱くなった。
気力が湧いた。


そんな気分にさせてくれる作品だったと思います。


この興奮、しばらく収まりそうにありません。
素晴らしかった。


そして結果発表も待ち遠しいです。
果たしてどういう結果が待っているのか…。